「介護の仕事って、実際どんな1日を過ごしてるの?」——家族や友人にそう聞かれても、うまく説明できない。忙しすぎて、自分でも一日を振り返る余裕がない。そんな介護職の「リアルな1日」を、早番から夜勤まで時間を追って描いてみました。
介護職として働く人、これから介護の世界に入ろうとしている人、そして介護職の家族を持つ人へ。現場の本音が少しでも伝われば嬉しいです。
はじめに:介護職は今、かつてない人手不足
厚生労働省の推計によると、2026 年度に必要とされる介護職員は約 240 万人。対して、約 25 万人が不足すると見込まれています。さらに 2040 年度には約 57 万人の不足。2023 年には、介護職員数が調査開始以降はじめて減少に転じました。
有効求人倍率を見ると、介護関係職種は全職種平均(約 1.2 倍)の 約 3 倍。訪問介護員にいたっては 14 倍を超える年もあり、「採用がほぼ不可能」と言われる水準です。
つまり今、介護職員一人ひとりに、かつてないほど重い負担がかかっている。この記事で描く「1日」も、その人手不足を抜きには語れません。
【早番】6時起き、申し送りからの怒涛のスタート
早番の出勤は施設によって 7 時前後。逆算すると 5 時台に起きる人も多い。通勤の電車で、まだ半分眠っている頭を起こしていく。
出勤してまず夜勤者からの申し送り。利用者さんの体調、夜間の様子、その日の注意点を短時間で頭に入れます。聞き漏らしは事故につながるので、眠い頭をフル回転させる時間です。
そこからは怒涛。起床介助、着替えの介助、トイレ誘導、朝食の準備と食事介助。食事介助は誤嚥のリスクと隣り合わせで、一口ごとに気を抜けません。「おはようございます」と笑顔で声をかけながら、頭の中では次の段取りを組み立てている。朝の数時間で、すでに汗だくになる日も珍しくありません。
【日中】入浴介助、レクリエーション、終わらない記録
午前の山場は入浴介助。利用者さんを安全に浴室へ誘導し、洗身・洗髪を介助し、また居室へ。湿度の高い浴室で何人もの入浴を介助すると、体力をごっそり持っていかれます。介護リフトのない施設では、移乗のたびに腰へ負担がかかる。
腰痛は介護職の「職業病」のように語られます。でも本来、それは設備と人員でかなり防げるもの。腰を消耗品のように扱わないでほしい、というのが現場の本音です。
昼食の介助を終えると、午後はレクリエーション。利用者さんに楽しんでもらうために、盛り上げ役にもなります。その合間に、連絡帳や介護記録の記入。記録は「あとでまとめて」と思っても、分単位で動いているうちに時間は溶けていく。結局、休憩を削って書いたり、申し送り後に残って書いたりすることになります。
【遅番】夕食から就寝介助、夜のざわつき
遅番は昼前後の出勤で、夜にかけてのシフト。夕方は再び忙しさのピークです。夕食の準備と食事介助、口腔ケア、トイレ誘導、そして就寝介助。
日が落ちると、認知症のある利用者さんが落ち着かなくなる「夕暮れ症候群」が起きやすい時間帯でもあります。「家に帰りたい」と訴える方に寄り添いながら、他の利用者さんの就寝介助も進める。気持ちと体が、何人分にも引き裂かれる感覚があります。
遅番者が施設を出る頃には、もう外は真っ暗。世間が一日を終える時間に、介護の現場はまだ動き続けています。
【夜勤】16時間、一人で何十人を見る緊張
介護現場の夜勤は、その負担の重さがたびたび話題になります。実態として、2 交代夜勤の施設が全体の約 88% を占め、そのうち 約 85% が 16 時間以上の長時間夜勤です。
夜勤者は、フロアの何十人もの利用者さんを少人数、施設によっては一人で見ます。定期的な巡回、トイレ誘導、体位変換。眠っているように見えても、いつ急変が起きるかわからない。ナースコールが鳴るたびに、心臓が小さく跳ねます。
16 時間勤務では労働基準法上 1 時間以上の休憩が必要ですが、1 時間ではとても足りません。多くの施設が 2 時間程度の仮眠を設けたり、休憩を分割したりと工夫していますが、それでも「結局ほとんど眠れなかった」という声は絶えません。介護職が夜勤をつらいと感じる理由は、業務量の多さ、休憩・仮眠が取れないこと、生活リズムの乱れ——この 3 つに集約されます。
明け方、夜勤を乗り越えて朝の光を見たときの、あの解放感と疲労感。経験した人にしかわからない感覚です。
給料の現実 — 勤続10年で平均35万円台
これだけ心身を削る仕事の対価はどうか。厚生労働省「令和 6 年度介護従事者処遇状況等調査」によると、処遇改善加算を取得している事業所で働く常勤介護職員の平均給与額(月額・令和 6 年 9 月時点)は、勤続年数別におおよそ次のとおりです。
- 勤続 2 年未満:約 298,760 円
- 勤続 10 年以上:約 359,040 円
- 全体平均:約 338,200 円(前年比 +約 14,000 円)
ここから社会保険料や税金が引かれ、手取りはさらに下がります。夜勤手当を含めてこの水準であることに、「命と生活を預かる仕事なのに」と感じる人は少なくありません。10 年勤め上げても、他業種の中堅層に届かないという声もあります。
国も手をこまねいているわけではなく、介護報酬の臨時改定により、2026 年 6 月には処遇改善に係る部分が前倒しで実施され、+2.03% の引き上げが見込まれています。ただし、この引き上げが実際に給与明細へ反映されるかは、各事業所の判断に委ねられる部分もあります。「ニュースは見たけれど、明細は変わらなかった」とならないか、現場は注視しています。
施設形態で、働き方は大きく変わる
ひとくちに「介護職」と言っても、働く場所によって日々の中身はかなり違います。転職を考えるときの参考にもなるので、代表的な施設形態を整理します。
特別養護老人ホーム(特養)
要介護度の高い方が中心。身体介護の比重が大きく、夜勤もあります。介護をしっかり経験できる反面、体力的な負担は大きめです。
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目指すリハビリ中心の施設。医療職との連携が多く、特養とはまた違う知識が求められます。
デイサービス(通所介護)
日中のみの利用が基本で、原則として夜勤がありません。生活リズムを保ちやすく、家庭と両立したい人に選ばれやすい働き方です。
訪問介護
利用者さんの自宅を訪問し、一対一で支援します。マイペースに働ける一方、移動の負担や、一人で判断する場面の多さがあります。前述の通り、人手不足がとりわけ深刻な分野です。
「介護がしんどい」と感じたとき、仕事そのものを辞める前に、施設形態を変えるという選択肢があることは知っておいて損はありません。夜勤がつらいならデイサービス、というように、働き方を変えるだけで負担が大きく軽くなることもあります。
それでも、介護を続ける人がいる理由
ここまで負担の話を続けてきました。では、なぜ多くの人が介護の仕事を続けているのか。
利用者さんの「ありがとう」。少しずつ縮まる距離。昨日できなかったことが今日できた瞬間に立ち会えること。看取りの場に寄り添えること。数字には決して表れない、この仕事ならではの手応えがあります。
ちなみに、介護労働安定センター「令和 5 年度 介護労働実態調査」によると、直前職を辞めた理由として最も多いのは「職場の人間関係に問題があったため」で 34.3%。裏を返せば、仕事内容そのものより、人間関係で辞めてしまう人が多いということ。逆に、職場の人間関係さえ良ければ、しんどくても続けられる人は多いのです。
辞めたい夜は、ここで吐き出そう
早番の朝も、夜勤の長い夜も、給料明細を見た月末も。介護職のしんどさは、同じ現場を知る人にしか本当には伝わりません。家族に話しても「大変だね」で終わってしまう。
だからこそ、同じ職種の仲間と本音でつながれる場所が必要です。グチトモには、医療・介護カテゴリで毎日たくさんの愚痴が投稿されています。「夜勤明けで頭が回らない」「お局さんがしんどい」「腰がもう限界」——そんな一言に、「わかる」「私もです」と返してくれる仲間が、ここで待っています。
今日もお疲れさまでした。あなたが抱えているそのモヤモヤ、ひとりで抱えなくていい。誰かが必ず、「わかる」と言ってくれます。
出典・参考資料
- 厚生労働省「第 9 期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2026 年度に約 240 万人必要・約 25 万人不足) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41379.html
- 日本医労連「介護施設夜勤実態調査」(2 交代夜勤・16 時間以上夜勤の割合)※労働政策研究・研修機構(JILPT)紹介 https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20250305b.html
- 厚生労働省「令和 6 年度介護従事者処遇状況等調査」(勤続年数別の平均給与額) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(訪問介護員の有効求人倍率) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1.html
- 介護労働安定センター「令和 5 年度 介護労働実態調査」(離職理由) https://www.kaigo-center.or.jp/report/jittai/
