日本医療労働組合連合会の調査によると、看護師の 約 80% が「辞めたいと思ったことがある」 と回答しています。「いつも思っている」が 24.0%、「ときどき思う」が 55.2%。これだけ多くの仲間が同じ気持ちでいるのに、なぜか職場では「辛い」とは言いづらい。

この記事では、看護師が「辞めたい」と感じるリアルな瞬間を 15 個、本音のまま並べました。そして、その「辞めたい」が、データで見るとどういう現実なのかも一緒に整理します。読んで「私もそれ」と頷けたなら、あなたは何もおかしくありません。

📊 データの出典本記事の数値は、日本看護協会「病院看護実態調査」、日本医労連「看護職員の労働実態調査」などの調査に基づいています。出典は記事末尾の「出典・参考資料」に明記しています。

「辞めたい」は8割、でも離職率は11% — このギャップの正体

冒頭の通り、看護師の約 8 割が「辞めたい」と思ったことがある(日本医労連)。一方で、実際に職場を去る人の割合は、日本看護協会の「病院看護実態調査」によると、正規雇用の看護職員で 約 11%。「辞めたい人は山ほどいるのに、実際に辞めるのは 1 割ほど」——この大きなギャップが、看護師の置かれた状況を象徴しています。

辞めたいのに、辞められない。責任感、患者さんへの思い、資格を活かしたい気持ち、次の職場への不安。いろいろな理由で、多くの看護師が「辞めたい」を抱えたまま働き続けています。

もうひとつ注目したいのが、新卒よりも既卒(転職して入った人)のほうが離職率が高いこと。同じ調査では、新卒採用者の離職率が約 8% なのに対し、既卒採用者は 約 16%。経験を積んだ人ほど「ここも違った」と離れていく——これは、個人の問題ではなく、職場環境の問題が根深いことを示しています。

辞めたくなる背景にあるのは、主に夜勤を含む長時間労働、時間外労働の常態化、そして人間関係です。ここから並べる 15 の「瞬間」は、その現実を、現場の言葉で表したものです。

1. 夜勤明けの電車、寝過ごさないか不安で逆に眠れない

16 時間の夜勤を終えて、朝のラッシュ前の電車に乗る。座席に座った瞬間、眠気が一気に押し寄せる。でも乗り過ごしたら最寄り駅から逆方向の終点まで連れて行かれる恐怖で、結局熟睡できない。

立って乗る日もある。吊革を握りながら、つり目になりそうな眠気と戦う。家に着いて制服のまま倒れ込み、目が覚めたら夕方。「人生損してる」と思いながら、また次の夜勤までの数時間で生活を立て直す。これが週 2-3 回繰り返される。

2. 患者さんから「あなた看護師なのに冷たい」と言われる

毎日忙しい中で、できる限り優しく対応してるつもり。でも、ある日突然「冷たい」「機械的だ」と言われる瞬間がある。8 人の患者を 1 人で見ているのに、その 1 人だけに常時優しい笑顔を向け続けるのは、構造的に無理。

家に帰って「私、本当に冷たいのかな」と泣くこともある。でも次の日にはまた笑顔で出勤する。同じ職種の仲間にしか分からない、この虚しさ を吐き出せる場所が欲しいと思うのは、こういう瞬間。

3. インシデントレポートを書く時間がない

ヒヤリハットがあったら、その日のうちにインシデントレポートを書くのがルール。でも、勤務中は分単位で動いてるから書く時間なんて取れない。退勤後に残業して書く(しかも残業代つかないことも多い)か、家に持ち帰って書くか。

「書きやすい時間も確保せずに書け書けと言うな」と思いながら、結局自分の時間を削って書く。これが看護師の「サービス残業」の代表例。

4. 急変対応で休憩潰れる、お昼食べる時間がない日

13:00 からの休憩を待ち望んでいたのに、12:50 に急変対応の招集。心臓マッサージ、輸液、医師への連絡、家族への連絡…。気づいたら 14:30、お昼を食べる気力もない。退勤前にコンビニのアイスを買って、自分を労うのが日課。

「今日は休憩取れた?」と同僚に聞かれて、「無理だった、また」と苦笑い。お互い様だよね、と分かり合うのが救い。

5. ナースコール連打、5 回連続で「水ください」だけ

他の患者さんの処置中なのに、同じ患者さんから 5 回連続でナースコール。内容は毎回「水ください」「テレビ消して」「窓開けて」の繰り返し。「ボタンの位置を覚えてくれた」のは嬉しいけど、看護師は介護タクシーじゃない。

でもキレるわけにいかない。深呼吸して、優しく対応して、また他の処置に戻る。この感情労働の連続が、 メンタルを少しずつ削っていく。

6. お局看護師の機嫌で、その日の部署の空気が決まる

15 年目のお局看護師が機嫌悪い日は、誰も話しかけない。話しかけて「今いいですか?」って聞いた瞬間に「忙しい!」と返される。質問できないから業務が遅れる。新人が泣いて辞めていく。

逆にお局が機嫌良い日は、部署全体が穏やか。皆で「今日は機嫌いいよ、声かけるなら今だよ」と情報共有する文化。これって看護師業界だけ?

7. 看取りの瞬間、心が裂けそうになる

受け持ち患者さんを看取る瞬間。家族が泣き崩れている横で、自分は冷静に死亡確認の準備をする。でも、家に帰る車の中で号泣。「あの患者さん、私の祖父と同じ年だった」「最期の言葉、ちゃんと家族に届いたかな」と一晩考えてしまう。

次の日も普通の顔で出勤して、また別の患者さんを担当する。このリセット作業が、年々辛くなっている のは、私だけじゃないはず。

8. 給料明細を見て月末に泣く

基本給 + 夜勤手当 + 残業代を期待して給料明細を開く。期待してたよりずっと低い数字。「夜勤 5 回入ったのに?」「残業 30 時間したのに?」。命を扱う仕事なのに、コンビニのアルバイトとさほど変わらない時給に絶望する瞬間。

新人時代だけじゃない、3 年目も、5 年目も同じ。給料が業務量に見合ってないという調査では 看護師の 42.6% が「賃金が安い」 を辞めたい理由として挙げています。

9. 連勤地獄、休みなのに頭が病棟にある

7 連勤の最終日。「明日休み!」と心躍らせて家に帰る。でも休みの日も、寝てる時に「あの患者さんの点滴大丈夫だったかな」「申し送り漏れてたらどうしよう」と病棟のことが頭から離れない。

休んでるのに休めてない。趣味も友達との約束もキャンセルが続く。気づいたら、看護師以外の自分が分からなくなる

10. プリセプター業務、自分の仕事 + 新人指導の二重負担

プリセプターになったらプリセプター手当が月 3000 円とか。これで新人 1 人の指導責任、自分の業務、自分の研修、すべてやれと言われる。「指導しながら自分の仕事こなすの、無理ゲーじゃない?」

新人が辞めたら「指導不足」と言われる。新人がミスしたら「教えなかったのか」と言われる。誰がプリセプターやりたがるのか、本気で疑問。

11. 申し送り中に呼ばれる、3 分集中させて

日勤と夜勤の引き継ぎ「申し送り」。これが終わらないと次の業務に入れない。なのに、申し送り中に「ナースコール来ました」「家族からお電話です」「採血お願いします」が連発。

「3 分でいいから集中させて」と心の中で叫びながら、結局申し送りを中断して対応に行く。情報の取りこぼしで後でインシデントが起きる、という悪循環。

12. ICU からの転入患者、情報量が頭に入らない

ICU から一般病棟に転入してくる患者さん。引き継ぎ書類が 20 ページ、点滴ルートが 5 本、内服薬が 12 種類。これを 15 分で把握しろと言われる。

夜勤明けの頭にこの情報量はキツい。同期と「ICU の引き継ぎってもうちょい簡略化してほしいよね」と愚痴り合うのが、唯一の癒し。

13. 夜勤の仮眠が取れない地獄

16 時間夜勤の中の 2 時間仮眠。せっかく寝ようと思ったらナースコール、急変、家族の問い合わせ。結局 30 分も寝られないまま、また日勤帯の業務へ。

仮眠時間を「休憩時間」と扱うかどうかでも病院によって違う。労働基準法的にどうなのこれ と思いながら、まあ慣れてしまった自分が一番怖い。

14. 立ち仕事で腰がもう限界

介護リフトのない病棟で、体重 80kg の患者さんを 1 人で体位変換。腰がギシッと音を立てる。湿布貼ってマッサージガンで対処してるけど、根本的に解決しない。

同期で腰のヘルニアになって辞めた子もいる。看護師人生は腰との戦い。リフト買ってくれと言っても病院は買ってくれない。

15. 同期が次々辞めていく、寂しさと焦り

新人時代、5 人いた同期。3 年目で 2 人辞め、5 年目でまた 1 人辞め、気づいたら自分含めて 2 人。「私も辞めるべきなのかな」と何度も思う。

辞めた友達は転職して年収が上がったとか、人間関係が楽になったとか聞くと、心がぐらつく。でも、患者さんの「ありがとう」の一言で、もうちょっと頑張ろうと思える。

もう限界かもしれない、と思ったら

15 個のうち、いくつ「私も」がありましたか。これだけ当てはまるのは、あなたが弱いからではなく、看護という仕事の負担が、それだけ重いからです。

ただ、もし次のような状態が続いているなら、それは心と体からの危険信号です。夜勤明けでもないのに涙が出る。出勤前に動悸や吐き気がする。休みの日も病棟のことが頭から離れず眠れない。食欲のない日が 2 週間以上続く——。そんなときは、我慢を続けるより、心療内科を受診したり、いったん現場を離れたりすることを、どうか自分に許してあげてください。

そして、看護師には大きな強みがあります。それは、国家資格があるから、一度離れても必ず戻れること。総合病院がつらいなら、クリニック、訪問看護、健診センター、企業の医務室、派遣やブランク OK の求人——働き方の選択肢は驚くほど広い。「看護師を辞める」ことは、「看護を一生やめる」ことでは決してありません。同じ医療・介護の現場については、介護職のリアルな1日も、環境を考えるヒントになるはずです。

それでも、いちばん身近な救いは、同じ現場を知る仲間の「わかる」かもしれません。グチトモには、看護師カテゴリで毎日たくさんの本音が投稿されています。「夜勤明けで頭ぼうっとしてた」「うちもお局看護師いる」「もう辞めたい」——そんな一言に、「わかる」「私もです」と返してくれる誰かが、ここで待っています。

今日もお疲れさまでした。あなたが抱えているそのモヤモヤ、ひとりで抱えなくていいんです。

出典・参考資料

  1. 日本医労連(日本医療労働組合連合会)「看護職員の労働実態調査」(2022 年)。「辞めたいと思う」約 8 割(いつも 24.0% + ときどき 55.2%)、辞めたい理由「賃金が安い」42.6% 等 https://www.irouren.or.jp/research/kango/
  2. 日本看護協会「病院看護実態調査」(正規雇用看護職員の離職率 約 11%、新卒採用者 約 8%、既卒採用者 約 16%) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/101.pdf